2006年に取材した三国漁港でのセリの様子
11月6日といえば……
11月6日、火曜日。
さて、今日は何の日でしょうか?
1910(明治43)年のこの日、上野に日本初の木造アパートが完成したことから「アパート記念日」だってことは、今ググって知ったけど、もちろん、言いたいのはそんなことじゃない。
11月6日といえば、松葉ガニや越前ガニ、日本海が誇るブランドズワイガニ漁の解禁日。そうです、蟹の季節が本格的に開幕を告げる日なのです。
ブランドズワイを狙う蟹漁船は、5日のうちに出港し、6日午前0時を待って網を入れ。今日は、各地で初セリがあったはず。Facebookで検索してみたら、神戸の『二代目梅太郎』という料理店のページで、初セリの様子が紹介されていました。
越前ガニの三国漁港でも初セリがあって、「極」という極上蟹様には35万円くらいの値段がついたそうです。
明日のニュースが楽しみだ、と思っていたら……
ズワイガニの子どもが減っている?
朝日新聞デジタルに、気になるニュースが出てました。
新聞記事はリンクが消えちゃうこともあるので、キャプチャ画像を貼っておきます。
いわく。
日本海区水産研究所で能登沖から山陰沖までの137調査地点でズワイガニの資源量を測定したところ、大人のカニは例年並みの数が測定されたが、未成熟の稚ガニの数は極めて少なかった。数年後には漁獲量が半減するかも! という内容です。
さらに調べてみると、昨日(11/5)、鳥取県のNHKニュースでも、ズワイガニ漁解禁の話題が取り上げられていました。漁期を前にした調査によると、今シーズンの漁獲量は平年並みという予想。でも、「成長途中の小型のカニの生息数が平年より少ない」ので、鳥取県と兵庫県の漁業者団体は、漁獲量を自主規制して資源保護に努める、らしい。
ほんとのところ、ズワイガニは減ってしまうんだろうか?
松葉ガニや越前ガニが、食べられなくなったり、今よりもさらに値段が高騰してしまうとしたら、こんなに悲しいことはありません。
本当のところ、その資源量はどうなんだろう?
と、こういう時は、きちんとした研究機関などのデータを探ってみるのが大切です。まずは、朝日新聞デジタルのニュースソースにもなっていた日本海区水産研究所のウェブサイトを探してみると。
ありました。
表の魚種、上から6番目。ズワイガニの「日本海系群/A海域(富山県以西)」が、越前ガニや松葉ガニに該当します。さっそく、報告書やデータを確認してみました。
ひとまずの結論としては、安心してください、資源量は「横ばい」です。
サマリーを少し引用します。
1999 年以降の資源量は、2003 年から 2007 年まで増加傾向にあったが、2008 年から 2015 年は減少傾向であった。2017 年の資源量は 21,300 トンに増加したものの、資源が減少した 2008 年以降の平均的なレベルである。過去 5 年間(2013〜2017年)の資源量の推移から、資源動向は横ばいと判断した。
鳥取NHKのニュースにもあったように、近年、日本海のブランドズワイガニ漁は、厳格な自主規制が貫かれてます。獲り尽くすことなく、資源を守りながら漁を続けていくために、漁業者のみなさんが頑張ってるんですね。だから、とんでもない天変地異的なハプニングがない限り、松葉ガニが食べられなくなる、ということはなさそうです。
今、何らかの理由で子ガニの数が少なくて、数年後、漁獲高が少し落ち込む時期があったとしても、日本海のブランドカニ漁師のみなさんは、その矜持と生活を賭けて、ズワイガニを守ってくれると信じています。
もちろん、油断はできません。
同じ資料に、資源量などの推移グラフがありました。
出典/平成29年度魚種別系群別資源評価全国資源評価報告会資料(水産庁増殖推進部漁場資源課)
資源量の増減が一目瞭然でわかりやすいグラフを引用してみました。
具体的な数字を調べてみると、さらに驚愕。本州日本海側、A海域のズワイガニの漁獲量は、1970年には1万4000トンを超えていたのが、1992年には1600トン余りにまで激減。その後、資源保護のコンセンサスが広がって、2010年代は3000トン代で推移してきている、というのが現状です。
僕たちが美味しいカニを食べ続けられるのは、獲りすぎないよう、でも、ちゃんと庶民の食卓に届くよう、自主規制しながら頑張っている漁師さんたちのおかげ、ということを痛感します。
近年、同じような漁場(日本海A海域)で韓国漁船も操業してて、漁獲高が増えてるみたいだけど、韓国の漁師のみなさんにも、日本海のブランドズワイガニへの愛を共有して、持続可能なカニ漁が続くことを願っています。
なにはともあれ、今年も蟹シーズン開幕です!
蟹に限らず、漁業にとって資源保護は大切な課題です。なんでもかんでも、とにかく安く大量に! と求めるのは、消費者の罪ともいえますね。いい蟹様は、とっておきの店から適切な値段で買って、ありがたく堪能する。蟹は少々高いからこそ「ごちそう」なんだと、改めて心に刻んでおくことにします。
それなのに、いい加減な蟹を悪質なショップで買って「捨てるしかない!」なんてことになるのは愚の骨頂。
良質な蟹の資源保護のためにも『蟹は祭だ!』のおすすめショップ情報を、ご活用あれ!