大きいことは良いことです。大きいカニならば身もたっぷりつまっていて嬉しいに違いありません。となると、世界でいちばん大きいカニならばどれくらいたっぷり食べられるのでしょう?
世界最大のカニについて知る前にまず、身近で大きいカニというイメージのあるタラバガニのサイズを知っておきましょう。敵を知り己を知れば百戦危うからず、ってなんのこっちゃ。
一般的なタラバガニのサイズは甲羅のサイズ(甲幅)が25cmくらい、足も入れると体長1m。文句なしに大きいですね。しかし世の中、上には上がいます。
(この時点でタラバガニを食べたくなっちゃった方は『匠本舗』の特大たらばがにがおすすめ!!)
世界最大のカニに迫る
では世界最大のカニはというと、実はこちらも日本近海でとれるカニでしてその名もタカアシガニ、英名をSpider Crabといいます。この「最大」というのは足の長さも含めた全長で計るため、足が長い方が有利。タカアシガニはその名前のとおり、足がむちゃくちゃに長い足長カニさんです。
ところでタカシガニという名前、聞き覚えのある方も多いのではないでしょうか。トロール船で比較的簡単に捕まえることができる上におとなしくて飼育しやすいため、水族館でもよく見ることができます。
さてこのタカアシガニ、どれくらいまで成長するのかというと、ギネスブックに掲載されている記録ではなんと驚異の5.79m!足を多少曲げていても見上げる高さになること間違いなしのサイズです。大きいですねー。
もう少しタカアシガニの生態について見てみましょう。
生息しているのは本州から九州にかけての太平洋岸沿いで、主に深さ200〜300mの深さの砂地で暮らしています。
水族館で見るタカアシガニはじっとしていますし、なんなら座り込んでしまっているので動きが緩慢な印象がありますが、JAMSTEC(海洋研究開発機構)のレポート「『しんかい2000』によるタカアシガニの生態観察結果」によると、「時にその移動速度が著しく速い」「長い脚で飛ぶように移動している」とあることから、意外にも足は速いようです。
世界最大のカニのお味は…
さて、ここで忘れてはならない大切なことは、「美味しいの?」ということです。大きくても食べられなかったり、食べられても美味しくないのでは仕方がありません。大きければ身がたっぷりなんじゃないかと最初に書きましたが、概して大きいやつは大味なのがこの世の常。
味のレポートについては当サイトを運営している永江さんが食べていますので、そちらの実食レポートをどうぞ。
・【実録】世界最大の蟹「タカアシガニ」を食べた思い出を語る
…….あまり美味しくなさそうですね。。。本人曰く「もういい」とのことでした。
ですが食レポを探していると「美味しい」と言っている方も結構いらっしゃいまして、カニ自体の品質や料理法、好みにもよるのかもしれません。(後述しますが品質にはかなりばらつきがあるようです)
タカアシガニの名産地・戸田
ではどこで食べられるのか?永江さんは南房総で食べたようですが、やはり有名なのは静岡県の戸田(へだ)です。
「タカアシガニ漁業の現状とその課題」と冠したこちらのレポートによると、なんと昭和35,6年あたり(つまり約55年前)からすでにタカアシガニを名物として利用し始めたとありますのでまあまあの歴史を誇る名産地と言えましょう。
さらに遡ると大正の頃からタカアシガニの甲羅に鬼の絵などを描いたお面を玄関に飾って魔除けにする習慣もあり、かなり地元の生活に密着した存在だったと言えます。
さて、食べられるお店を探すべく「タカアシガニ 美味しい」で検索してみると色々とヒットします。観光サイトの駿河湾NAVIでは「西伊豆戸田名物タカアシガニのおいしい店・名店」と特集ページが組まれています。
https://www.instagram.com/p/BfkzYg9lC1I/
ちなみに戸田では深海魚料理も有名で、「深海魚の聖地」と称して ”DEEP! HEDA” というサイトまで持っています。(深海魚の聖地は深海だろう、とつっこみたくなる気持ちはそっとしまっておきましょう。)
タカアシガニ※も深海魚もトロール船のいわゆる底引き網漁で捕ります。このトロール船の漁が解禁となるのが9月中旬から翌5月中旬ですので、タカアシガニが捕れるのも主にこの時期です(禁漁期はカニ籠という別の漁法で捕るそうです)。戸田のタカアシガニを出すお店に問い合わせたところ、タカアシガニも他の深海魚も美味しくなるのは寒くなる時期、11〜1月が良いとのことでした。
タカアシガニ自体は上述のカニ籠で捕ったりいけすで飼うこともできるため年間を通じて食べることができるようですが、どうせ話のタネに食べるなら深海魚も一緒に美味しく食べられる11〜1月がおすすめです!
※タカアシガニの生息域は250〜500mと深海域(水深200mより深いところを深海と呼びます)ですので、広義では深海魚に含まれます。
通販でも注文できる?
「戸田は遠いけどタカアシガニは食べたい!通販はないのか、ここはカニの通販おすすめサイトだろう!」とお怒りの諸兄。落ち着いてください。通販もございます。
戸田ではタカアシガニ漁をする船は料理店と提携していて捕れたカニは直接お店に持ち込むためあまり市場には出ないのですが、余ったものや他の船でたまたま網に引っかかってきたカニが漁協に持ち込まれるそうです。そしてそのカニを漁協のホームページから購入することができます。
・戸田漁協直売所
これなら戸田まで行かなくても大丈夫ですね。そして親切にも調理法まで出ています。ただし、漁協に問い合わせたところ「タカアシガニは身のつまり具合で当たり外れが激しく、しかも傷みやすい」という情報もいただきましたので、ご購入の際は自己責任でお願いいたします。。。
海外のでかいカニ
タカアシガニは世界最大のカニであるわけで、つまり海外のどんなでかいカニもみんなタカアシガニよりは小さいということになります。ところがどっこい、サイズのからくりというものがありまして、全長はタカアシガニに及ばずとも甲羅のサイズでいえばもっとでかいカニ様が世界にはおわすのです。
その名もタスマニアンキングクラブ(タスマニアオオガニ)。
タカアシガニの甲羅が最大40cm程度であるのに対し、こちらは最大45cm(サイトによっては60cmとか色々書いてありますが学術的な資料では最大が45cmということになっています)。タカアシガニの甲羅よりちょっと大きい。しかも写真でわかるとおり、爪が大きい。すごく大きい。腕とか挟まれたら絶対折れます。
タスマニアンキングクラブさんのお住まいは名前のとおり、オーストラリア南部、タスマニア島沖です。
このカニ様の肝心のお味ですが、こちらもレストランで普通に提供されています。しかも水産資源として保護しないといけないくらいの人気のカニ様で、調べてると資源保護の資料がわんさか出てきました。放っておくと取りすぎちゃうくらい美味しくて人気のカニ、一度は食べてみたい。
View this post on Instagram
近縁種と思われるストーンクラブ(味は多分変わらない)ならばフロリダでも食べられるようです。
・【世界のカニ】特大のカニ爪!フロリダの宝石・ストーンクラブの魅力に迫る
ちなみにこのカニをとるための苦闘とそのあとの巨大ガニの料理の様子をモンスターハンターとしてテレビでもおなじみの平坂寛さんが記事にしています。大きすぎて寸胴鍋に入らなかったり、カニ爪のフライが尋常じゃなく大きかったりと絵面がすごいです。
残念ながら現地のレストランで食べられるのはもっと小さいサイズですので、巨大爪を食べるなら船をチャーターして採りに行く必要があるようです。お金があって船酔いしない方は是非チャレンジを!
まあ現実的にはタスマニアンキングクラブを食べるのはなかなか難しいので、とりあえず駿河湾に行けば手っ取り早く世界最大のカニを食べられるというご案内でした。
世界最大とかじゃなくていいから美味しいカニを手軽に食べたい!という方は北釧水産の毛ガニがおすすめです!